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〈メディア〉の哲学 ルーマン社会システム論の射程と限界

〈メディア〉の哲学 大黒岳彦 著

大黒岳彦 著

発売日:2006.09.11
定価:5,280円
サイズ:四六判
ISBNコード:4-7571-0199-6

品切れ

この本の内容

現在世に出ている「メディア論」の多くは、ジャーナリスティックな時事批評やメディア技術の 未来学の類です。「メディア論」がこのようなディレッタントや評論家のエッセイに留まり続け、 「学」として離陸できないのは、「メディア」概念を、原理的・哲学的に検討することなく、 常識に妥協して無批判に使用することに原因の一端があります。 本書は、こうした常識的な「メディア」観の問題性を抉り出し、しりぞけた上で、それに変わる新しい 「メディア」理解の構図を対置します。  そして同時に難解を以て知られる理論社会学者ニクラス・ルーマンの一つの解読の試みも行います。 なぜならN.ルーマンこそは従来に無い革新的な「メディア」概念を提示した人物だからです。 本書によってルーマン思想の新たな側面がクローズアップされることにもなるはずです。

目次


緒論
0 メディア論の何が問題なのか?
0・0・1 メディア概念の曖昧と狭隘
0・0・2 情報伝達における「小包の比喩」
0・0・3 コミュニケーション図式
0・0・4 電信技術によるモノと情報の分離
0・0・5 メディア=テクノロジー観
0・0・6 手段・代替としてのメディア
0・0・7 メディアの一般理論の試み
0・0・8 ルーマンのメディア理論
0・0・9 本書の結構

第1部 ルーマン以前
1 代表的メディア理論の概観
1・1 「メディア史観」の彫琢過程――イニス、マクルーハン、ハヴロック、オング
1・1・1 トロント学派とその周辺
1・1・2 「メディアの理解」の諸相
1・1・3 口頭メディアの優位
1・2 アウラと遊戯空間――ベンヤミン
1・2・1 初期のメディア概念
1・2・2 アウラとメディア
1・2・3 ベンヤミンとオング
1・2・4 遊戯空間の発見
1・3 書き込みシステムの変遷――キットラー
1・3・1 キットラー・メディア論の構図
1・3・2 書き込みシステム
1・3・3 メディアの考古学
1・3・4 一八〇〇年の書き込みシステム
1・3・5 アルファベットの全面化
1・3・6 アルファベットのジレンマ
1・3・7 一九〇〇年の書き込みシステム
1・3・8 Stop making sence!
1・3・9 テクスト産出機械
1・3・10 二〇〇〇年の書き込みシステム?
1・3・11 メディアがもたらす人間の終焉
1・4 伝達作用としてのメディア――ドブレ
1・4・1 メディオロジーのメディア観
1・4・2 伝達作用
1・4・3 メディオロジーの特性
1・4・4 メディア圏の理論的構図
1・4・5 メディオロジーの可能性と限界
1・5 コンテクストとしてのメディア――デリダ
1・5・1 現前とメディア
1・5・2 声とエクリチュール
1・5・3 コンテクストとしての世界
1・5・4 脱・構築と散種
1・5・5 自己同一性と反復可能性
1・5・6 世界のメディア的存在性格
1・5・7 二つのドグマの超克
1・5・8 デリダからルーマンへ

第2部 ルーマン・メディア論の構図
2 ルーマン社会システム論のメディア論への接続
2・1 ルーマン理論体系にメディア論は存在するか?
2・1・1 ルーマンにおけるメディア把握の変遷
2・1・2 ルーマンのマスメディア論
2・2 コミュニケーションの構造
2・2・1 知覚とコミュニケーション
2・2・2 コミュニケーションの三つの契機
2・2・3 コミュニケーションの第一次性
2・2・4 三つの不確定性
2・3 メディア概念の四つの次元
2・4 伝播メディアの変遷
2・4・1 メディアと社会との相即
2・4・2 伝播メディア推移の構図
2・4・3 口頭メディアとしての言語
2・4・4 文字
2・4・5 出版
2・4・6 電子メディア
2・5 成果メディアの分化
2・5・1 伝播メディアから成果メディアへ
2・5・2 「選択」と「動機」の方向づけとしての成果メディア
2・5・3 ルーマンとパーソンズ
2・5・4 成果メディアの定義
2・5・5 成果メディアの二値コード
2・5・6 オートポイエーシス・システムとしてのコミュニケーション
2・5・7 コミュニケーションによる社会分化
2・5・8 コードとプログラム
2・5・9 プログラムと構造
2・5・10 構造と期待
2・5・11 システムの観察
2・5・12 観察と区別
2・5・13 観察の多文脈性と相対性
2・5・14 第二次観察の「超越論」性
2・5・15 第二次観察と社会の自己記述
2・6 メディア概念の第三の系譜――メディアと形式
2・6・1 ハイダーのメディア概念
2・6・2 メディアと形式
2・6・3 メディアの階層構造
2・6・4 「メディア=素材」観
2・6・5 「メディア/形式」とコミュニケーション・メディアとの関係
2・6・6 メディア把握の断層
2・6・7 メディアの外延の拡張
2・6・8 メディアとしての「意味」
2・6・9 メディアと観察
2・6・10 メディアの流通
2・6・11 形式の凝結
2・6・12 社会の創発とメディア
2・6・13 ルーマンとデリダ
2・6・14 メディア観の新しい次元

第3部 ルーマンのマスメディア論
3 システム論とメディア論の併存と拮抗
3・1 マスメディアの現況
3・2 システムとしてのマスメディア
3・3 ルーマン以前のマスメディア論
3・3・1 「マスメディア=道具」説のヴァリエーション
3・3・2 擬似環境とシェマ
3・3・3 擬似環境の環境化
3・3・4 イメージから記号へ
3・4 機能的分化システムとしてのマスメディア
3・4・1 マス・コミュニケーションとは如何なる「コミュニケーション」か?
3・4・2 マスメディアの二つの現実
3・4・3 メディアとしての「世論」
3・4・4 マスメディア・システムのコードとプログラム
3・4・5 「情報」という概念
3・4・6 マスメディア・システムの現実構成
3・4・7 背景的現実の構造
3・4・8 社会の自己観察
3・4・9 ルーマン・マスメディア論の問題性

第4部 メディアの一般理論のために
4 ルーマン理論を内側から破る
4・1 ルーマン・メディア論の画期性とその限界
4・1・1 ルーマン社会システム論の二つの支柱
4・1・2 オペレーショナル構成主義の陥穽
4・1・3 汎メディア主義の袋小路
4・2 メディアの一般理論あるいは基礎的メディア論の構想
4・2・1 身体的共現前のコミュニケーションとしてのインタラクション
4・2・2 ルーマンの身体観
4・2・3 「眼差し」というメディア
4・2・4 「身体メディア」論の構図
4・2・5 電子メディアによる身体と生活世界システムの変容

あとがき
索引

著者紹介

大黒 岳彦(だいこく たけひこ) 明治大学情報コミュニケーション学部助教授。 1961年香川県生まれ。東京大学教養学部を卒業後、東京大学理学系大学院(科学史科学基礎論専攻)博士課程単位取得退学。1992年日本放送協会に入局(番組制作ディレクター)。退職後、東京大学大学院学際情報学府にて博士課程単位取得退学。専門は哲学・情報社会論。