書籍出版
シリーズ企画
世界のなかの日本経済:不確実性を超えて
「刊行のことば」
激しく変動する世界経済には不確実な要素があまりにも多く、未来を予測することは容易ではない。しかし確かな価値理念を羅針盤としつつ、知的解決を求めながら大海の荒波を縫って「日本丸」は航行を続けなければならない。
不確実性の原因のひとつは、G20の誕生に見られるように、中国をはじめアジアの躍進で世界経済のプレーヤーの数が飛躍的に増大し、国際的な経済運営の舵取りが難しくなってきたこと。また、民主化の進展は巨額の財政赤字を生み出し、経済政策の選択肢を少なくしていること。さらに、IT技術の飛躍的な進歩によって市場はますますその機能を高め、不安定性の原因を生み出していること。金融部門が肥大化した現代経済では、金融市場の不安定性が実体経済に及ぼす影響も大きい。
貿易と直接投資の増大によって国家間の相互依存は密になっているが、国家主権を強化しなければならない分野も生まれている。自由貿易はいかなる利益のために擁護されるのか。直接投資は新興国経済を活性化するだけでなく、労働力の減少に悩む先進国経済にとっても解決策となりうるのか。高度な知識と技能を有する人材の育成と国際移動は経済成長とイノベーションにどう影響するのか。
競争の激化は地域の特性を奪い去り、「世界の同質化傾向」を生みだす。地方の疲弊と個性喪失が進行する中で、大都市では土地の私的所有や経済活動の自由をめぐる問題が生じている。都市社会の新しい規制を、どのような形で「自由の理念」と両立させるのか。
この新シリーズでは、以上のような問題意識のもとに第一線の優れた研究者10人に、新しい研究成果を取り入れながらわかりやすく論じてもらった。現下の日本の課題を理解し、政策上の主張に論理の筋道を与えるためにも、こうしたシリーズは必須なものと考える。将来社会を真摯に考える読者の手に、本シリーズが1冊でも多く届くことを期待する。
猪木武德
シリーズコンセプト
- 監修者が選んだ今後の日本経済を考えるうえで重要な10のテーマを設定。
- 日本経済の行方を決める国際経済に関するテーマも取り上げる。
- 各分野の第一線の経済学者が最新の研究を踏まえた書き下ろし。
- 単なる現状分析に留まらない長期的な視点を入れた論述。
- 現在の日本経済を一般読者にも分かりやすく説明、著者の主張とメッセージをこめる。
- 日本が今後グローバル経済で生き残るための条件を真摯に考察する。
最新刊情報
- 貿易自由化の理念と現実
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発売日 :2015.12.18定価 :2,530円
TPPは日本に何をもたらすのか? 自由貿易の意義と限界を知る!TPP(環太平洋パートナーシップ)協定交渉の大筋同意を受け、日本経済にとって貿易の自由化が進むことは確実になった。今後の貿易自由化の進展、それ...
- 「失われた20年」を超えて
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発売日 :2015.07.24定価 :2,530円
日本経済に希望はあるのか? 長期停滞からの復活のカギはどこに?バブル崩壊後の日本経済はなぜ「失われた20年」に陥ったのか? 政府・日銀・企業の行動を解剖し、複雑に絡み合った構造を解き明かす。日経新聞「...
- 拡大する直接投資と日本企業
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発売日 :2015.05.22定価 :2,750円
「第58回 日経・経済図書文化賞」受賞! 加速する企業のグローバル化.日本は本当に「空洞化」しているのか?90年代以降、多国籍化する企業による対外直接投資が投げかける諸問題を、エビデンス(科...
- 人材の国際移動とイノベーション
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発売日 :2015.02.24定価 :2,750円
世界で活躍する高度な人材はどこへ向かうのか?研究者・多国籍企業社員などの国際的に活躍する人々が、経済のイノベーションに関してどのような影響を及ぼしたか。また日本にとって国際的な人材の活用をどうして...
- 日本の都市のなにが問題か
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発売日 :2014.09.24定価 :2,640円
少子高齢化が進む日本にとって、地方の過疎、防災、介護の問題は緊急の課題になっている。その問題を解決するために、都市の有効な活用は不可欠である。市場メカニズムを生かした都市の活用法と問題点を明解に論...