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文学部という冒険 文脈の自由を求めて

文学部という冒険 田島正樹 著

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田島正樹 著

発売日:2022.01.26
定価:2,860円
サイズ:四六判
ISBNコード:978-4-7571-4359-3

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この本の内容

【 叢書「人文知の復興」 】   

より深く、より反時代的に

文学部に対する風当たりは、以前にもまして強くなっている。当の文学部自体が自信喪失して、さまざまに姑息な小手先の「改革」によって、この逆風を乗り切ろうとしている。
本書は、そんな世の流れに真っ向から反抗して、臆面もなく旧き良き人文学の意義を唱えようとするものである。文学部は、より深く反時代的に、その伝統と本分に立ち返ることによってのみ、その使命を果たすことができるからである。
聖書から、ドン・キホーテへ、カズオ・イシグロから、『映像研には手を出すな!』まで、古今東西のテキストを縦横無人に跳躍しながら、人文学の神髄と実践に触れる。

目次

プロローグ 精神の自由は知識ではない

第1章 文脈――テクストと実存をつなぐもの
 1 大学の始まりと12世紀ルネサンス
 2 自由学芸の英雄アベラール
 3 アリストテレスの弁証法
 4 新たな文脈を補う解釈
 5 キリスト教のテクスト
 6 福音書における読者の主体性

第2章 近代芸術の出発点――日常を異化する装置
 1 美学をめぐる難問
 2 近代芸術と近代以前
 3 物語と小説――意味の生成
 4 近代文学の始まり――『ドン・キホーテ』
 5 自然と芸術――虚構を迂回して真実へ
 6 『ハムレット』にみる異化作用

第3章 物象化した世界――経験の「全体性」の喪失
 1 フランス印象派の革新
 2 名作は観客の期待を裏切る――ラ・ベルマの演技
 3 アドルノの「聴取者類型」
 4 「全体性」の理念
 5 『失われた時を求めて』にみるスノビズム
 6 社交界と文学の教養――バルザックの『モデスト・ミニョン』

第4章 精神分析学の言語観――文脈の科学
 1 進化論とミーム――社会進化論の批判
 2 環境と文脈
 3 シニフィアンと文脈――フロイト
 4 アリストテレスにおける「アクラシア」
 5 シニフィアンと欲望――ラカン

第5章 批評――伝統への挑戦と覚醒
 1 芸術批評と敵対性
 2 人工知能による作品のディープラーニング
 3 ドイツ・ロマン主義の批評概念
 4 伝統・古典・権威

第6章 作品批評という営み――観客という共同体の創出
 1 カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』
 2 大童澄瞳『映像研には手を出すな!』の現代性

エピローグ ディオゲネス

あとがき

参考文献

著者紹介

田島正樹(たじま・まさき)
哲学者、元千葉大学文学部教授。1950年大阪生まれ。東京大学教養学部フランス科卒。同大学院博士課程哲学専攻修了。主な著書に、『ニーチェの遠近法』(青弓社)、『魂の美と幸い』(春秋社)、『正義の哲学』(河出書房新社)、『古代ギリシアの精神』(講談社選書メチエ)など。