みんなの建築コンペ論

新国立競技場問題をこえて

建築・都市レビュー叢書

山本想太郎/倉方俊輔 著
松田行正+杉本聖士 装丁

発売日
2020.07.17
定価
2,860円
サイズ等
四六判 268ページ (並製)
ISBNコード
978-4-7571-6082-8

内容

Overview

【建築・都市レビュー叢書 第6弾】

なぜ建築を競わせるのか?
みんなを束ね、社会を高める
建築コンペのを価値を問いなおす。

建築コンペは、公共的価値を高める装置として、広く行政に取り入れられ、建築的にも社会的にも価値のある建築物を、各所にもたらしてきた。

しかしながら、新国立競技場問題は、それが現代社会において本当に価値をもたらすものなのか、という問いを突きつけた。むしろ、そこであらわになったのは、建築界と社会との絶望的なまでのコミュニケーション不全であった。

本書は、新国立競技場問題を見つめてきた、建築家と建築史家が、その失敗を検証し、建築コンペの歴史・現状を詳らかにしながら、現代社会にマッチする建築コンペのモデルを提案する。

目次

Index

序 誰がためにコンペはあるのか

第1章 傷だらけのコンペ――新国立競技場コンペをめぐって
1 「新国立競技場基本構想国際デザイン競技」
2 専門家の異議から、白紙撤回へ
3 やり直しコンペの開催
4 社会はコンペで何を得たのか

第2章 コンペの歴史が語ること
1 便益への欲望――便利で利益のあるものをつくりたい
2 美麗への欲望――美しいものをつくりたい
3 継承への欲望――新人に機会を与えたい
4 似姿への欲望――「われわれ」にカタチを与えたい
5 調和への欲望――すでにある環境に合うものをつくりたい
6 公平への欲望――つくるものを公平に選びたい
7 破壊への欲望――いままでにないものをつくりたい
8 みんなの欲望をカタチにする装置としてのコンペ

第3章 日本のコンペの仕組みはどうなっているのか――設計発注方式の変遷
1 日本のコンペのいま
2 設計発注方式の種類
3 入札と随意契約
4 特命から〝プロポーザル?へ
5 品確法とコンペの消滅
6 建築の専門家はどのように発言してきたのか
7 コンペを継承していくために

第4章 「いい建築」を合意するプロセスへ――ポスト新国立競技場の建築コンペ像
1 「善きもの」としてのコンペ
2 現代社会におけるコンペの弱点
3 コンペという概念を更新する
4 これからのコンペのための三つの提言
5 コンペの再構築に向かって

終 章 コンペがつくる「いい建築」

著者

Author

山本想太郎 (やまもと・そうたろう)
建築家。1966年東京生まれ。山本想太郎設計アトリエ主宰。早稲田大学理工学研究科修了後、坂倉建築研究所に勤務。2004年より現職。東洋大学・工学院大学・芝浦工業大学非常勤講師。建築作品に《磯辺行久記念 越後妻有清津倉庫美術館》、《来迎寺》、《南洋堂ルーフラウンジ》(南泰裕、今村創平と共同設計・監理)など。著書に、『建築家を知る/建築家になる』(王国社)。共著に、『異議あり、新国立競技場』(岩波書店)など
倉方俊輔 (くらかた・しゅんすけ)
建築史家。1971年東京都生まれ。大阪市立大学准教授。早稲田大学理工学研究科修了後、博士(工学)。建築史の研究や批評に加え、建築公開イベント「イケフェス大阪」の実行委員を務めるなど、建築の価値を社会に広く伝える活動を行なっている。著書に『吉阪隆正とル・コルビュジエ』(王国社)、『伊東忠太建築資料集』(ゆまに書房)、『東京モダン建築さんぽ』(エクスナレッジ)。共著に『建築の日本展』(建築資料研究社)など多数。

書評情報

信濃毎日新聞 朝刊 (2020年10月3日付)