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情報化時代のプライバシー研究 「個の尊厳」と「公共性」の調和に向けて

情報化時代のプライバシー研究 青柳武彦 著

青柳武彦 著

発売日:2008.04.26
定価:4,180円
サイズ:A5判
ISBNコード:978-4-7571-0238-5

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この本の内容

プライバシーにかかわる権利は、近代社会が成熟するにつれて、その重要性と現実性が広く理解されるようになった。つまり、この権利は、私たちにとってぜいたくな新しい権利だが、だからこそ貴重な権利でもある。

目次

序文(公文俊平)
はじめに

第一部 プライバシーの生成と現状

第1章 プライバシー意識の芽生えから法的権利の形成へ
1.1 動物社会学的考察
1.2 個人主義の萌芽とプライバシーの意識
1.2.1 個人主義とプライバシー権
1.2.2 プライバシー権は自然権か
1.3 米国におけるプライバシー権の生成
1.3.1 ウォーレンとブランダイズ論文からプライバシー権認知へ
1.3.2 米国のプライバシー権の根拠法
1.4 日本におけるプライバシー権の生成
1.4.1 「宴のあと」裁判
1.4.2 日本のプライバシー権の根拠法
1.5 不可侵私的領域の形成
1.6 結論

第2章 プライバシー権への論理的アプローチ
2.1 英米法と大陸法
2.2 プライバシーとは何か
2.3 自己情報コントロール権説批判
2.3.1 英米法系アプローチと大陸法系アプローチ
2.3.2 定義としての自己情報コントロール権説の問題点
2.3.3 自己情報コントロール権説が裁判に及ぼした悪影響
2.4 プライバシーの定義の提案
2.5 プライバシー権侵害の本質
2.6 結論

第3章 プライバシー権の法環境
3.1 日本国憲法とプライバシー権
3.1.1 私人・間(しじん・かん)効力の問題
3.1.2 憲法の根拠条文
3.1.3 実体法上の根拠法の必要性
3.2 刑法とプライバシー権
3.2.1 名誉毀損罪
3.2.2 侮辱罪
3.2.3 刑法とプライバシー権侵害
3.3 民法とプライバシー権
3.3.1 損害賠償責任追及の法律的枠組み
3.3.2 一般的不法行為によるプライバシー権侵害責任の追及
3.3.3 債務不履行によるプライバシー権侵害責任の追及
3.4 プライバシー権の制限要素
3.4.1 「公知の事実」による制限
3.4.2 「公共の利益」による制限
3.4.3 法律によって制限される場合
3.4.4 死者のプライバシー
3.4.5 出版・報道の自由とプライバシー権
3.5 結論

第4章 情報化時代のプライバシー
4.1 受動的プライバシーと能動的プライバシー
4.1.1 「受動的プライバシー権」
4.1.2 「能動的プライバシー権」
4.2 能動的プライバシー権にふさわしい法環境
4.2.1 私法領域におけるプライバシー権
4.2.2 公法領域におけるプライバシー権
4.3 情報化時代における公共財としての個人情報
4.4 結論

第5章 プライバシー権の種類
5.1 情報に関するプライバシー権
5.1.1 インフォメーション・プライバシーとデータ・プライバシー
5.1.2 肖像権
5.1.2.1 プライバシー権としての肖像権
5.1.2.2 財産権としての肖像権
5.2 私的領域の自律権に関するプライバシー権
5.3 私生活の平穏・静謐を護るプライバシー権
5.4 日本型のプライバシー
5.5 結論

第1部 結論

第2部 現代社会におけるプライバシーの諸相

第6章 住基ネット
6.1 住基ネットの経済性について
6.1.1 住基ネットは行政電子化への第一歩
6.1.2 住基ネットは社会的インフラストラクチャー
6.1.3 社会的インフラストラクチャーの採算性
6.1.4 住基ネットの短期的直接的メリットによる採算性
6.2 住基ネットのプライバシー権問題
6.2.1 住基ネットのプライバシー性
6.2.2 住基ネット裁判
6.3 結論

第7章 個人情報保護法
7.1 法律の成立と見直し
7.2 個人情報保護法の構造的問題
7.2.1 広すぎる対象範囲と一律な扱い
7.2.2 厳しすぎる規制
7.2.3 個人情報の有用性と人権保護のバランス
7.3 違憲の疑い
7.3.1 違憲の疑いの第一:明白な萎縮現象
7.3.2 違憲の疑いの第二:規制が必要・最低限のレベルを超えている
7.3.3 違憲の疑いの第三:「表現の自由」を制限するほどの「明白で切迫した危険」はない
7.4 解釈論では対応不可能
7.4.1 「立法論」か「解釈論」か
7.4.2 特例や例外規定は実効性が小さい
7.4.3 今や巨大な法体系全体が個人情報 ”過” 保護の状態
7.4.4 解釈論ではカバーできない領域
7.5 企業としての当面の対応策
7.5.1 当局の姿勢の変化を先取りする
7.5.2 罰則について
7.6 結論

第8章 ユビキタス社会の構築とプライバシー
8.1 ユビキタス社会の到来
8.2 アンビエント・インテリジェンス(環境的知性)
8.3 「外在知」を豊富にするテクノロジー
8.3.1 コンテクスチュアル・コンピューティング
8.3.2 テラ・アーキテクチャー
8.3.3 電子タグ(RFID)
8.4 結論

第9章 監視カメラ
9.1 監視カメラを必要とする環境
9.2 犯罪原因論から犯罪機会論へ
9.3 監視カメラとプライバシー
9.3.1 監視カメラのプライバシー問題
9.3.2 プライバシー権としての肖像権
9.4 監視カメラの現状と展望
9.5 地方自治体による監視カメラの設置
9.6 英国における状況
9.7 監視カメラの有効性評価
9.8 結論

第10章 監視社会論再考
10.1 監視社会論の系譜
10.2 監視の人間的側面
10.3 監視とプライバシー
10.4 監視社会への嫌悪と恐怖
10.5 相互監視による牽制と均衡(チェック&バランス)
10.5.1 政治のチェック&バランス
10.5.2 経営システムとしてのチェック&バランス
10.5.3 経営学における監視の研究
10.6 監視の現代的意義
10.6.1 安全のための監視
10.6.2 協調の技術としての監視
10.7 結論

第2部 結論

おわりに

著者紹介

青柳 武彦(あおやなぎ たけひこ)
国際大学グローコム客員教授(情報法、情報社会学)、H&T取締役。
著書に『ビデオテックス戦略』、『電子出版』、『2005年日本浮上』(公文俊平らと共著)、『サイバー監視社会』、『個人情報「過」保護が日本を破壊する』などがある。