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雇用システムの理論 社会的多様性の比較制度分析

雇用システムの理論 デヴィッド・マースデン 著

デヴィッド・マースデン 著

宮本光晴/久保克行 訳

発売日:2007.06.01
定価:4,180円
サイズ:A5判
ISBNコード:978-4-7571-2164-5

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この本の内容

アメリカやイギリスなどのアングロ・サクソン型市場経済対ドイツ・日本型の市場経済という二項対立からは見えてこない「資本主義の多様性」を労使関係論の第一人者が解明する。

目次

第1部 雇用システムの理論
第1章 雇用関係
1 雇用システム
2  雇用契約の不完備性
2.1 機会主義
3 業務の「受容可能領域」の定義
3.1 暗黙知と文書化の問題
3.2 詳細な職務記述の非経済性
3.3 実際の仕事量の交渉
4 業務を職務に割り当てるための分類の利用
5 職務分類の機能
5.1 取引を簡単にするための職務カテゴリーの利用
5.2 システムへの統合
6 2つの反論の可能性
7 雇用関係の歴史的生成からの知見
8 結論

第2章 経営者権限の限界
1 はじめに
2 取引ルールと雇用関係
2.1 効率性:能力と職務の一致
2.2 履行可能性:透明性と機会主義のコントロール
2.3 類の網羅性
3 業務の配分ルール:タイプごとの事例
3.1 職務ルール
3.2 職域/職種ルール
3.3 職能ルール
3.4 資格ルール
4 ルールによる機会主義への対処
4.1 職務の境界と仕事の配分
4.2 雇用の継続
4.3 普段と異なる業務と業務の可変性
4.4 技能の認定と伝達
5 結論

第3章 雇用ルールと普及の優位性
1 はじめに
2 部分的な「進化論的安定戦略」としての業務の配分ルール
3 個々の取引ルールの優位性
3.1 ルールの堅固さ
3.2 革新のための先行者の困難
3.3 異なるルール間の両立不能性
4 企業間の制度の必要性
4.1 取引ルールの強化
4.2 力のバランスとメンバーの行動の統率
4.3 ルールの適用の柔軟化
4.4 取引ルールの再交渉
5 結論:進化論的安定戦略と労働の制度

第4章 分類ルールと雇用システムの統合
1 はじめに
2 職務分類の理論
2.1 簡単なモデル
2.2 職務分類の「原子論的」と「全体論的」視点
2.3 職務記述の不完備性
3 賃金統計における職務分類からの知見
4 労働市場慣行と職務分類
4.1 複数雇用者間の職務分類の協約
4.2 暗黙の了解と慣行
5 職務分類とその普及に関する国際比較研究
5.1 ILOによる賃金統計の再解釈
5.2 分類システムの適用範囲
6 分類ルールの普及のための制度の役割
7 雇用システム:取引ルールと企業間の制度の統合

第2部 実証分析の結果と人事管理への含意
第5章 データから見た雇用システムの多様性
1 雇用システムの国際比較:実証結果
2 生産アプローチと訓練アプローチを識別するための変数
2.1 仕事のデザイン
2.2 技術移転と職種別労働市場
2.3 内部昇進と内部労働市場
2.4 職務と賃金の分類における技能の取り扱い
2.5 職種別・内部労働市場と賃金体系
3 業務優先アプローチと機能優先アプローチを識別するための指標
3.1 コントロール・システム
3.2 業務の流れの硬直性
3.3 機能の特化および職務の細分化
3.4 階層的な職務の細分化
3.5 機能的柔軟性のパターン
4 雇用関係に関するルールから乖離しているケースはありうるのか
4.1 アメリカ
4.2 日本
5 結論

第6章 業績管理
1 はじめに
2 業績測定特有の難しさ
2.1 客観的かつ判断を必要としない業績基準
2.2 判断を必要とする業績基準
3 相互不信と業績管理
4 伝統的に使用されてきている業績基準
5 契約上の制約の業績基準への影響
5.1 履行可能性制約
5.2 効率性制約
6 モラル・ハザード、取引ルールと業績基準
6.1 従業員のモラル・ハザードに対する経営者の対策
6.2 経営者のモラル・ハザードに対する従業員の対策
7 結論:業績基準に対する社会的な影響
附録1 業績査定に用いられている基準の例
附録2

第7章 報酬とインセンティブ
1 報酬と分類の理論
1.1 労働の価格は数字ではなくルールである
1.2 価格と職務分類
2 ルールとしての価格、職務給としての価格
2.1 職務に対する報酬と機会主義的な行動
2.2 状況変化に対応する:賃金スケジュールが複雑な理由
2.3 職務別賃金と訓練期間中の賃金
3 職務別賃金の分類と業績給
3.1 モラルハザードと業績給
3.2 職種分類と追加的な報酬について
4 垂直的な分類・職種別分類と賃金構造
4.1 垂直的および職種別の賃金構造
4.2 ブルーカラーとホワイトカラーのヒエラルキーにおける賃金の継続性
4.3 組織別の報酬か職種別の技能に対する報酬か
4.4 企業別の人事刊行と賃金システム
5 まとめ

第8章 技能と労働市場の構造
1 はじめに
2 生産アプローチと訓練アプローチの違いが労働市場構造に与える影響
3 履行可能性と役割の柔軟性のアプローチ
4 職業別および内部労働市場による取引ルールの制度化
4.1 職種別労働市場の制度的基盤
4.2 企業が訓練費用を負担する際の制度の役割
4.3 内部労働市場と制度的な支援
5 買い手独占と2次的労働市場
6 雇用と自営
6.1 代替的な雇用に関するデータ
6.2 雇用システムと市場に仲介された雇用
6.3 雇用形態間の移動
7 まとめ

第3部 結論
第9章雇用システムと企業の理論:社会的多様性
1 はじめに
2 取引コスト・機会主義・知識
2.1 組織的学習
3 柔軟性・生産性・技能
4 企業内の信頼と協力の質
5 企業間の制度の役割
5.1 企業間の制度が生み出す利点
5.2 制度上の脆弱性の帰結
5.3 労働の制度の機能と形態
5.4 コーポレート・ガバナンスのモデル
6 雇用システムの社会的多様性

著者紹介

D・マーズデン
LSE労使関係学部教授。「Socio-Economic Reveiw」のエディターとして活躍。


訳者
宮本 光晴(みやもと みつはる)
専修大学教授

久保 克行(くぼ かつゆき)
早稲田大学商学部講師